日本全国の小規模飲食店、約1万店舗が参画する当協会は、地域経済を牽引する⼩規模飲⾷店の“⼩さな声”を、政府・関係省庁・関係団体の皆様へ届けるため、日々活動しております。

つきましては、本年度における当協会としての要望をまとめましたので共有いたします。

  1. 飲食店におけるインバウンド対策への支援
  2. 急激な物価高騰や特別融資の返済等による経営難への対策
  3. 賃上げと人材確保・人手不足への対応
  4. 持続的発展に向けた事業承継・後継者育成支援
  5. 食品ロスへの意識不足改善
  6. 飲食店における国際金融都市への対応
  7. 飲食店における喫煙環境の整備

【要望書】

新型コロナウイルスの5類感染症への移行に伴い、日常生活やビジネス活動が正常化し、 売上はコロナ禍前まで回復してきている一方、原材料やエネルギー価格高騰等のコスト増が小規模飲食店の収益を圧迫している。加えて、人手不足の深刻化に伴い、多くの小規模飲食店では、人材確保・維持のため、収益が改善しない中、賃上げに取り組んでいる。小規模飲食店を支えるための小規模飲食店向け賃上げ促進税制の延長・拡充等、支援政策を求めたい。

他方で、小規模飲食店は文化や伝統、時に子供の見守り等、地域の包摂性、安全・安心コミュニティを支える存在である。小規模飲食店の自立的な経営を実現するため、まちづくりやインバウンド需要の取込み等、地域全体の需要と消費を喚起する政策支援の拡充が必要である。

また小規模飲食店の経営においては、食事の提供と共に、社交場のコミュニケーションを豊かにする嗜好品(酒、たばこ等)の取り扱いが、集客・滞在の生命線となる。新規飲食店の喫煙選択余地を創ることや更なる社会的な分煙対策を進めることで、喫煙者、禁煙者双方にとって居心地の良い空間を提供できるよう、国と自治体が一体となり、環境整備を進めていただきたい。

▼要望事項

①飲食店におけるインバウンド対策への支援

  • 現状と課題
    • 訪日外国人においては、海外と喫煙に関するルールが異なる日本における適切な喫煙行動が理解されにくいため、不適切な路上喫煙やポイ捨てが発生し、トラブルにもなりかねない
    • 昨今のタクシー乗務員不足により夜間帯における移動が制限され、特に深夜帯での小規模飲食店の利用が進みにくい状況となっている
      • コロナ禍を経て日本人においても、夜間帯の移動が制限は飲食店およびナイトエンターテイメント業界には非常に大きな課題
    • コロナ禍の行動変容や夜間帯における移動制限が原因となり、特に二次会需要の小規模飲食店においては客足が戻っていない状況がある
  • 要望事項
    •  訪日外国人に対して、喫煙可能な店舗を適切に理解していただくための店頭周知をより明確化し全国で統一的に展開すること
      • 日本独自の喫煙ルールについての周知方法を適切に実施すること
      • 喫煙可能であることの店外告知の方法の統一化
    • タクシーの需要過多に対する国の対策強化
    • ナイトタイムエコノミー政策の推進
      • 訪日外国人等来訪者増加を好機に捉え、「消費拡大」や「滞在時間の延長」による街の活性化を図るために小規模飲食店への支援を強化すること

②急激な物価高騰や特別融資の返済等による経営難への対策・税制支援

  • 現状と課題
    • 昨今の急激な原材料費・エネルギー費の高騰、コロナ禍に受給したゼロゼロ融資など、新型コロナウイルスに対応した特別融資の返済開始、返済がピークを迎えていることなどにより、小規模飲食店の経営は困窮を極めている
    • 小規模飲食店の厳しい経営環境を克服するためには、客単価の引き上げによる付加価値拡大が必須である。一方で、税務上の交際費から除かれる飲食費の基準があるため、社内規定で1人5,000円以下と定める法人が多く、小規模飲食店の客単価引き上げが困難な要因となっている
    • 簡易課税制度におけるみなし仕入率について、他の事業区分が見直しをされる中、飲食店業に関しては1991年以降変更されておらず、原材料費や輸送費の高騰によるみなし仕入率の上昇も勘案されていない
    • 事業者免税点制度の適用は年間売上1,000万円以下の事業者であるが、飲食店業の1坪当たり売上平均は年間140万円[i]、小規模飲食店においては10坪以上の店舗が多いため、年間売上1,000万円以下という条件では該当しないケースが多い
      ※[i]: 2021年 日本政策金融公庫資料より
  • 要望事項
    • 経営実態に即した、新規融資・借換え・返済猶予等の資金繰り支援
    • 減免を含めた債務整理・再チャレンジ支援の強化
    • ゼロゼロ融資について国の負担による利子補給期間の変調や借換に伴う追加保証料の補助など、利用者の返済負担軽減への支援を強化すること
    • 中小企業の事業活動に不可欠な交際費課税の特例措置(800 万円まで全額損金算入可能)について、 令和6年3月末までの適用期限を延長
    • 法人の需要喚起と小規模飲食店の付加価値拡大のため、交際費の範囲から除かれる飲食費の上限額の引き上げを行うこと。また法人における交際費の経費参入枠大幅緩和を行い、更なる消費と法人の内部留保活用を促進すること
    • 飲食店業における、みなし仕入率の引き上げを行うこと
    • 事業者免税点制度の適用条件(年間売上1,000万円以下)を緩和すること

③賃上げと人材確保・人手不足への対応

  • 現状と課題
    • 新型コロナウイルス感染症の5類への移行、行動制限の緩和に伴い経済活動が回復傾向にある一方、小規模飲食店では急激な人手不足に陥っている。また限られた経営資源の中、収益力確保による継続的な賃上げや採用等、人材の確保と定着に向けた対策が急務である
  • 要望事項
    • 就業を阻害する税・社会保障制度の見直し(130 万円など年収の壁の是正等)
    • 小規模飲食店向け賃上げ促進税制の延長・拡充
    • 働き方改革への取組み費用軽減、男性を含む育児休業の取得促進に向けた両立支援の拡充

④持続的発展に向けた事業承継・後継者育成支援

  • 現状と課題
    • 地域経済を支える小規模飲食店事業者の中には、後継者確保が困難なことから事業承継を行えず、経営資源の喪失につながる廃業を選ばざるを得ない事態の発生が懸念されており、小規模飲食店が抱える喫緊の課題となっている
  • 要望事項
    • 事業承継意識の集中的な啓発、手順や事例等の情報提供、事業承継計画策定等の専門家派遣による無料相談事業の拡大、M&Aへの助成など、支援の充実

⑤食品ロスへの意識不足改善

  • 現状と課題
    • 国内の食品ロスに関する事業別調査で、外食産業は2番目に多い結果と出ている。主な要因として、食べ残し・仕入/仕込過多などが挙げられる。小規模飲食店における食品ロスへの意識は低く、意識改革が急務である
  • 要望事項
    • 商慣習の見直し等による食品事業者の廃棄抑制や消費者への普及・啓発、学校等における食育・環境教育の実施など、食品ロス削減に向けての国民運動をこれまで以上に強化すること

⑥飲食店における国際金融都市への対応

  • 現状と課題
    • キャッシュレスに対応できていない小規模飲食店等、飲食業界全体のデジタル化が遅れている
      • 業種や店舗規模、売上げによって手数料率が異なるため、小規模事業者が多い生活衛生業においては手数料率が高く、キャッシュレス導入の妨げに繋がっている
    • 都市圏を中心に発着する公共交通機関の営業時間が小規模飲食店の売上に直結しており、コロナ禍で繰り上げられた終電等の公共交通機関の最終便が全面的に戻っていないことが経営を圧迫している。欧米諸国では24時間運行の公共交通機関もあり、ナイトタイムエコノミーの観点や国際金融都市としても遅れをとっている。
    • 風俗営業に該当する社交飲食店等の営業時間は、風営法や各都道府県の条例により規制されており、小規模飲食店の売上にも影響する
  • 要望事項
    • キャッシュレス化促進の阻害要因となっているクレジット決済の手数料について低減化を強力に進めること
    • コロナ禍で繰り上げられた公共交通機関の最終便を、コロナ禍以前まで繰り下げ、将来的には24時間運行を目指すこと
    • 風俗営業に該当する社交飲食店等の深夜営業時間を延長すること

⑦飲食店における喫煙環境の整備

  • 現状と課題
    • 改正健康増進法において、喫煙できる店舗(喫煙目的施設と既存特定飲食提供施設)の基準が提示されているにも関わらず、自治体によってその解釈や運用が異なっている状況
    • 新規店は既存特定飲食提供施設の対象外であり、喫煙を可能とするに際しては、分煙設備の導入が必要となり、小規模飲食店においては、原材料費や人件費が高騰している中で投資負担が重い
  • 要望事項
    • 法令の解釈が自治体によって恣意的となることが無いよう、適切かつ統一的な対応とされることを要望する
    • 新規店においても一定の基準を踏まえた喫煙選択の余地を創ることを求める
    • たばこ税等を活用した自治体における喫煙場所整備の助成において、比較的安価な投資で喫煙可能場所が創出できる小規模飲食店への助成制度を拡充すること、及び実態に即した利用しやすい制度とすること